冷泉荘ウラニワ 2006.4-2009.3

Concept;都市の隙間のコミュニティガーデン。

冷泉荘(れいせんそう、れいぜんそう)は、福岡市博多区にある築53年(2011年現在)のビルです。現在は「リノベーションミュージアム冷泉荘」として、このビルの所有者の吉原住宅さんが管理運営しています。
◉リノベーションミュージアム冷泉荘HP

これ以前は「トラベラーズプロジェクト」というのが行われていて、これは期間限定3年間(2006.4.29-
2009.3.31)のプロジェクトでした。これは福岡でのリノベーションプロジェクトとしては先駆けで、それまでアパートだったこのビルを、様々な業態(カフェ、ショップ、飲食店、事務所、アートギャラリーなど)の雑居複合ビルと変えて話題となりました。
◉TRAVELERS PROJECT-冷泉荘-

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私はたまたまこのプロジェクトに関わって、この建物の裏側にある「都市の隙間」のようなスペースの庭をつくることになります。名前は『ウラニワ』。幅2.2m、奥行き13mのスペースでした。

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せっかくつくったのだから、有効に活用したいし人にも来てほしいということで、冷泉荘のグランドオープンにあわせて、造形作家の寺田太郎さんに作品の屋外展示をお願いしました。それが『廃園の鳥たち』という展示でしたが、これがとてもこのウラニワに合っていて好評でした。
以後、期間限定プロジェクトが終わる3年間、いくつかのアート展示やイベントが行われました。以下に簡単に紹介します。
私にとっては、それまでは都市のデッドスペースに過ぎなかった場所に人が来ることが不思議なことでした。これは場所の再生または更新であり、それまで捨ておかれた場所を、アートや人との交流のための『コミュニティガーデン』と変えることになりました。
残念なことに、今はまた『廃園』となっていますが……。

f0163758_19323317.jpg00.『ウラニワのヴィーナス』
作:高田裕子(アーティスト)
期間:常設


ウラニワに到るには半地下の通路を通るのですが、その通路の正面になにか欲しかったので高田さんにお願いして描いてもらいました。
ヴィーナスの指さす方に庭が続いています。

f0163758_19335263.jpg01.『廃園の鳥たち』
展示:寺田太郎(造形作家)
期間:2006.4.29-30


鉄の造形の寺田さんの展示。鉄製の様々な鳥が庭という展示空間にとても合いました。地面を歩かせたり、切り株に止めたり、木陰に隠したり……。
この鳥も元は屑鉄(リサイクル鉄)と聞き、ウラニワ誕生の記念展示としてこれ以上のものはなかったと思います。

f0163758_1936111.jpg02.藤瀬大喜個展『カエルの逆襲』
展示:藤瀬大喜(金属造形)
期間:2006.8.21-27

◉藤瀬大喜HP

金属造形の藤瀬さんの展示。藤瀬さんは型をつくって金属を固めて造形する「鋳造」が専門。カエルの作品が人気なので庭に展示してもらいました。
展示のタイトルは鳥の次はカエルかと言われないように勢いを出してもらいました。

f0163758_1936132.jpg03.『和敬清寂 にわ展』
展示:藤崎貴子(デザイナー)
期間:2006.10.22-31


街の隙間に偶発的に再生された「ウラニワ」
ここには不思議な清寂があります。
糸、ガラス、樹々、花
にわに和敬の心を探す展示です。(フライヤーより転記)

藤崎さんは茶道を嗜み、アート、本、デザインなど好奇心と探究心の強い女性。
彼女の初の個展として、ウラニワを使って植物をつかった展示をしてくれました。
『和敬清寂』は茶道のこころの言葉。
自身の生い立ちの記憶、好きなアーティストであるジョージア・オキーフへの尊敬。様々な思いをこめた洗練、且つ力強い展示となりました。

f0163758_19363568.jpg04.『太陽の影』野崎陽介写真展
展示:野崎陽介(フォトグラファー)
期間:2007.5.3-29


庭で絵画や写真などの展示も面白いのではないかと作家を探してもらって、野崎さんに写真の展示してもらうことになりました。雨のあたらない半地下通路に写真を数点展示されましたが、屋外の庭に写真の展示はなかなか難しかったようです。

f0163758_22581954.jpg05.ウラニワ カフェ
運営:山中みちる
期間:2007.5.3-4 5.27


当時の冷泉荘のトラベルフロントというカフェの常連さんで、珈琲を飲むのもいれるのも大好きな山中さんがウラニワで「出張カフェ」をしました。
山中さんのお友達やそのお友達が入れ替わり立ち替わりたくさんやってきて大盛況に。
これをきっかけにウラニワはアート展示だけでなくワークショップやお茶会などにも使われるようになりました。

f0163758_1937517.jpg06.candle workshop* 『願い』
講師:naho(キャンドルアーティスト)
開催日:2007.9.23


ろうを溶かして色や香りをつけて、様々なかたちにつくるワークショップ。午後に4組の講習をしてそれぞれカフェタイムもありました。
日が暮れてから参加者に集まってもらって、ウラニワでキャンドルライトのパーティを行いました。

f0163758_19372079.jpg07.ウラニワ茶会『ウラニワ×茶の湯・和の心』
運営:すず茶人&奥方
コラボレーション:平川渚(アーティスト)
開催日:2008.4.20

◉すず茶人Blog ◉平川渚ウェブサイト

カジュアルなお茶会を標榜されているすず茶人と奥方。地下通路を茶庭の「露地」に、ウラニワを「茶席」に見立ててお茶会を開いてくれました。お菓子を用意してくれたり案内をするスタッフさんは着物姿で楽しみつつも真剣な様子。
アーティストの平川さんの糸をつかった作品も茶席の床の間のしつらえのように、茶会に華を添えていました。
◉庭園/ランドスケープデザイン日記

f0163758_19373421.jpg08.藤瀬大喜作品展『モネラ展(粘菌展)』
展示:藤瀬大喜(金属造形)
期間:2008.6.1-6.30

◉藤瀬大喜HP

藤瀬さんの2回目の展示。
この回はキノコのような造形でした。作品と同じ大きさの色のついたコンクリートを使って庭空間を生かした展示をしてくれました。
◉庭園/ランドスケープデザイン日記

f0163758_19385998.jpg09.『ウラニワ 3人展』
展示:高田晋平(木彫)、山下宰(山野草) 、藤瀬大喜(金属造形)
期間:2008.9/21-28


久留米、筑後、佐賀のものづくりのグループ展「縁展(えんてん)」という展覧会が久留米の石橋文化センターでほぼ毎年行われています。
この回のウラニワ展示はこの展覧会のメンバーの3人展でした。
◉庭園/ランドスケープデザイン日記

f0163758_0565264.jpg10.『週末はウラニワで過ごそう』
展示:石井康博(フィギュアアーティスト)
期間:2008.10/12.13.18.19.25.26

◉石井康博Blog

フィギュア(人形)作家の石井さんの展示。
小さな妖精のような人形がウラニワのあちこち思いがけないところに。また風船とLED素子を使った光のオブジェはウラニワ全体を不思議な風景に変えて、夜はひときわ幻想的でした。
これが最後の展示になりましたが、最後にふさわしい、とてもよい余韻を残す展示になりました。
フィギュア製作のワークショップも行われ、石井ワールドに惹き込まれた人も多かったと思います。
◉庭園/ランドスケープデザイン日記

備忘録のつもりでまとめておくつもりが、かなりのボリュームになりました。最後になりましたが、
冷泉荘『ウラニワ』に関係してくれた方、遊びに来てくれた方などすべての人々に感謝します。
『ウラニワ』はひとつの場所を大切にして、開いて共有していけば、いろんなことが起こり得るということを教えてくれたように思います。逆に考えると、よい交流場所がないと人間関係はなかなか広がらないのかもしれません。『屋外とアート』『庭ならでは楽しいひと時』……
機会を見つけてまたこのようなプロジェクトができたら幸せだと思います。
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